拡大するコールドチェーン市場

 拡大するコールドチェーン市場【ニューデリー発】
全インド商工会議所連合会(ASSOCHAM)によれば、インドのコールドチェーンの市場規模は
2013 年の 2,000 億ルピー(1 ルピー=1.7 円)から 2017 年には 5,150 億ルピーまで拡大するこ
とが予想されている。元来、農業立国であったインドでは、厳しい自然環境と、物流の未発達を
要因に、主要農作物の約 4 割が毎年市場に流通する以前に廃棄され、その損失額は、年間約 4,400
億ルピーにも上ると言われてきた。他方、近年はファーストフードなどの大型フランチャイズの
市場進出が増加しているが、今後のさらなる発展には、冷凍・冷蔵物流環境の改善が極めて重要
となっている。
現在、インド全土に配備されている冷凍・冷蔵設備は 6,300 ヶ所、その収容能力は 3,000 万ト
ンとされる。しかし、国内の市場規模を踏まえると 6,100 万トン以上を保管できる設備が必要と
されている。一方、低温運搬車両の配備状況を見ると、現在 250 社の冷凍・冷蔵車両を保有する
会社が存在し約 2 万 5,000 台が稼働中とされる。このうち約 7 割が乳製品を運搬するための専用
車両で、その他冷凍・冷蔵品を運搬する車両は 8,000 台弱に留まる。

<業界を牽引する企業>
インドのコールドチェーン業界は、地域限定型の小規模な倉庫業や配送業が大半を占める。こ
うした中、全国的な配送網を有する地場の大手企業としては、デリーを拠点とする Coldex(コ
ールデックス)や Gati Kauser(ガティ・カウサ―)、ムンバイを拠点とする Kelvin(ケルビン)、
Snowman(スノーマン)や RK Foodland(RK フードランド)、ハイデラバードを拠点とする Transafe
(トランセーフ)などがある。これらの大手企業は各社ともに数百台規模の冷凍・冷蔵車両を有
し、自社で冷蔵・冷凍倉庫も管理・運営。大口の顧客として、スターバックス、KFC、マクドナ
ルドやドミノピザなど国際的な外食チェーンも名を連ねる。

<今後の展望>
インドのコールドチェーンの発展には、政府の取り組み姿勢がカギの一つになる。政府は高ま
るコールドチェーンへのニーズを踏まえ、農業省が中心となって 2012 年に全国コールドチェー
ン開発センター(NCCD)を開設。同センターは野菜や果物等の生鮮食品の保管や運搬のためのコ
ールドチェーンの技術標準を設けることを目的に設立された。同センターは、産業界やその他の
関係者と連携し、コールドチェーン整備に資する研究開発や既存のコールドチェーン設備の認証2

や格付けを行う権限も有する。さらにコールドチェーンに携わる人材の育成や、全国網のコール
ドチェーン整備に向けた政府への助言も行う。
政府はこの他に、コールドチェーン整備プロジェクトに係る機材等の輸入に対して課せられる
関税の 5%への減税、コールドチェーン設備の建設や機材の導入に際して事業者が支払うサービ
ス税の免除、コールドチェーン設備に利用される機材(特定 20 品目)を製造した際に課せられ
る物品税の免除などを 2010 年に施行、コールドチェーン業界への事業者の参入を促進しようと
している。
小売業界の行方ももう一つの大きなカギと言えるはずだ。インドは、非組織型の中小・零細小
売業が市場の 8 割を占めており、全国的な物流ネットワークを有するような組織型の小売業は限
定的で、その歴史も浅い。その一因に外資開放の遅れがある。インドでは、2012 年に漸くスー
パーマーケットやコンビニなどの総合小売業に対し、51%まで外国企業の資本参加が認められた
が、現時点で投資認可が下りているのは英国テスコとタタ財閥の合弁案件のみだ。外資の進出が
遅れる背景には、「最低投資額は一億ドル以上でその半額を物流網等インフラ整備に投資するこ
と」などの厳しい投資要件がある。今後、外資系小売業の参入をうまく進めることができれば、
野菜、肉、魚等の生鮮食品、さらに冷蔵・冷凍の加工食品等の全国レベルでの配送ニーズが生ま
れ、自ずとコールドチェーン整備も進展するものと期待される。

 

(JETRO 経済短信第391号)